骨盤固定ベルト
サムスリング
骨盤損傷による出血は、生命の危険に関わります。
サムスリングは骨盤を素早く整復固定します。
適正ニュートン値でオートストップ
処置者に左右されず、常に同じ力で固定
3ステップで簡単に装着
スタンダードサイズで90%のヒップサイズに適応
サムスリングⅡのオートストップバックルは骨盤輪への張力をコントロールし適正ニュートン値に達すると自動停止しその位置で最適の固定圧力を維持します。装着したままX線/CT/MRIの撮影、カテーテル処置に対応します。
サムスリングⅡは下臀部大転子部の高さで骨盤を外周から圧迫して適正張力固定します。このメカニズムはEBM(Evidence Based)に基づき設計されたサムスリングⅡだけの他には類を見ない特許構造です。
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空にし、臀部周辺に
何もないことを確認する。
サムスリングの黒い面を上にして受傷者の大転子(臀部)
の下に差し込む。
バックルに通し、
ストラップを引く。
(二人で同時に両方から
引っ張るのが望ましい。
そのままの状態で、黒の
ストラップをサムスリングの表面にしっかりと押し付ける。
サムスリングII には、複数サイズあるのはなぜですか?
サムスリングIIは、股関節周囲径が68.58-114.3cm、股関節周囲径が81.28-127cmの2種類のサイズがあります。サムメディカル社は、スタンダードサイズが成人人口の95%に当てはまると予測しているが、我々はその範囲外に位置する傷病者に小さいサイズを提供している。現在市販されている他の用具とは異なり、ベルトを切断したりサイズを合わせたりする必要がなく、すべての傷病者に適切に適合するように、複数のサイズが提供されています。さらに、ベルトの切断/サイズ合わせの必要ないので、サムスリングIIは、再使用することができます。
サムスリングIIは、SAMターニケット XTのような最適な力に達するとピンが固定して動かなくなるオートロックバックルの代わりに、自動格納式のピンのあるオートストップバックルを備えているのはなぜですか?
四肢ターニケットは、いったん適用すると適用し直す可能性は低い。ターニケットが創傷の近位にある限り、必要になることはロッドの調節のみです。対照的に、骨盤固定具は、ケアの進行を通して調整され、再適用される必要があるかもしれません。このプロセスを容易にするために、スリングにロックしないバックルを選択しました。さらに、スリングのベルクロでの固定システムは頑健であり、これまで臨床使用におけ不具合の報告はありませんでした。
サムスリング IIのオートストップバックルは、なぜ円周方向の圧迫力は150Nで作動するのですか?
サムスリングIIのオートストップバックルに組み込まれた150 Nの張力限度は、死体研究および臨床試験に基づいています。円周方向の圧迫力の150Nは、骨折の整復と傷病者へのリスク軽減の最適なバランスであることがわかりました。
固定具は150 N(公称値)で結合します。これは、いくつかの発表された研究の組み合わせから得られたものです。ボットラングらの死体研究では、有効かつ安全な圧迫力として180 Nが確立されました。しかしながら、研究者らは、180 Nのラインを越えた張力は、測位骨盤側骨折をさら変形させたり悪化させるリスクを増大させる可能性があることを懸念していました。クリーグらの生きたヒトの臨床試験では、140 Nの圧迫が用いられ、有効性と安全性が実証されました。そこでバックルの力学的な標準偏差に基づいて適用された力が、公表値の140Nと180Nの間に収まるように、商品化された製品には150Nが選択されました。
骨盤スリングは費用対効果が高いですか?
オープンブック型の骨盤骨折が疑われる場合、傷病者搬送のために骨盤スリングを利用すると、傷病者の転帰が著しく改善することを示しています。骨盤固定具はまた、入院期間および器材の使用を減少させることが示されており、骨盤固定具の適用は全体的に費用削減の可能性のある手段です。さらに、今日市販されている他のいくつかの骨盤スリングとは異なり、SAMスリングは再利用できるので、より費用対効果の高い用具である可能性があります。
スリングを使用すると、経時的に皮膚を傷つけますか?圧迫を軽減するために、バックルをどのくらいの頻度で開放する必要がありますか?スリングはどの程度の時間、装着しておくことができますか?
骨盤骨折を整復するのに必要な力は、場合によっては、時間によって皮膚損傷を引き起こすことは考えられます。時間の長さは傷病者に大きく依存し、またどれだけ輸液が投与されたかでも変わります。
ガイドラインは施設によって異なります。本資料で引用されているクリーグらの一連の臨床では、スリングを傷病者へ装着してから2~192時間放置し、皮膚のダメージの徴候はありませんでした。
スリングは小児に使用可能ですか?
該当するこれまでの評価所見によれば、傷病者がSAMスリングのサイズに適したサイズであれば、その使用は禁忌ではありません。サムスリングIIは、股関節周囲径が68.58cm以上の傷病者に適応となります。(スモールサイズ)
妊娠中の傷病者にスリングを使用できますか?
妊娠中の傷病者に対する骨盤固定具の使用が推奨されています。サムスリングが妊娠傷病者に使用された症例は:Stohlner V, Gill JR, Murphy CG, Carrothers AD.妊娠中の骨盤輪損傷に対する創外固定の確実な使用(open book/APC2)BMJ Case Rep. 2015 Dec 16;2015.[PS159]
スリングは股関節/大腿骨頭/寛骨臼骨折に使用すべきですか?
大腿骨近位部骨折の治療にはスリングの適応はありません。しかし、大腿骨近位部骨折がある場合の骨盤骨折の治療には禁忌ではありません。様々な救急医療機関は、大腿骨近位部骨折に対して、骨盤固定具のプロトコルは異なって扱っています。病状に対して中立であると感じて使用を禁忌とする機関もあります。潜在的な骨盤骨折を治療しないリスクは股関節骨折の圧迫による害を上回るとの考えで、全ての骨盤帯損傷の疑いに対して装着を勧める機関もあります。最終的には、その決定は医療部門責任者の裁量によります。注目すべきことは、大腿骨近位部骨折と骨盤骨折は通常、損傷のメカニズムが異なることです。すなわち、骨盤骨折は高エネルギーの衝突か高所からの落下で発生するのに対し、大腿骨近位部骨折は通常、低エネルギーの立位からの転倒で起こります。
高齢傷病者にスリングを使用できますか?
文献は、骨盤骨折の高齢傷病者に固定具を使用すべきであるという考えを支持しています。一般に、地面落下等による脆弱性骨折のほとんどは大腿骨近位部骨折であり、骨盤骨折ではありません。骨盤骨折は通常、転倒や車の衝撃などの高エネルギー衝撃によるものであるため、若い年代で多く見られます。スリングは大腿骨近位部骨折を治療するものではありませんが、その使用は禁忌ではありません。老人傷病者の高エネルギー骨盤骨折におけるサムスリング使用の症例報告が複数あります。
X線撮影前にスリングを外すべきですか?
サムスリングが骨盤骨折を良好に整復していたため、初診時のX線写真では明らかでなく見落とされた例が、臨床文献には数多くあります。X線撮影前に固定具が解除された場合、臨床医は血腫が破壊される可能性があることを認識する必要があります。 Clements J, Jeavons R, White C, McMurtry I. The Concealment of Significant Pelvic Injuries on Computed Tomography Evaluation by Pelvic Compression Devices. J Emerg Med. 2015 Jun 5. [PS150] Beaven A, Toman E, Cooper J. Post binder radiography in pelvic trauma. BMJ Case Rep. 2016 Jul 5;2016. pii: bcr2016216420. doi:10.1136/bcr-2016-216420. [PS169]
スリングは、肥満の傷病者にも効果がある円周方法の圧迫を加えますか?
スリングは病的な肥満傷病者の骨盤骨折を効果的に減少させることが示されています: Robinson K.「救急医学教育」ニューサウスウェールズ大学2014年1月[PS122]
スリングのバックルのX線不透過性スプリングがX線撮影と診断を妨害しますか?
サムスリングはCTを含むX線撮影で使われた長い歴史があり、診断に苦慮したレポートはありません。サムスリングはX線透過性で、バックルのバネはX線図で可視ですが、治療を妨げることはありません。これは臨床文献で十分に立証されています。例えば、Kriegらの臨床試験の報告は、バネをアーチファクトと認め、「これらのバネによって引き起こされたCTイメージに対するアーチファクトは、無視できることが証明され、後部骨折の可視化に影響を及ぼさなかった」。また、英国軍の研究は、アフガニスタンのフィールド病院: Bonner TJ、Eardley WG、Newell N、Masouros S、Matthews JJ、Gibb I、Clasper JCの骨盤骨折傷病者172人における正しい固定具の位置決めを評価するために、X線写真上のバネの画像を用いました。 Bonner TJ, Eardley WG, Newell N, Masouros S, Matthews JJ, Gibb I, Clasper JC. Accurate placement of a pelvic binder improves reduction of unstable fractures of the pelvic ring. J Bone Joint Surg Br. 2011 Nov;93(11):1524-8. [PS72]
バックルからピンが出ているのが見ていませんが、スリングは壊れていますか?
いいえ、ピンは適正な張力が得られるように、装着中に出てきてベルトの穴にはまります。 ピンは、組織の弛緩や骨盤の整復などの要因により、傷病者にスリングをかけた後にバックルに戻ります。 最初装着時にストラップに張力が維持されている限り、スリングは意図した通りに機能しています。
サムスリングIIは牽引用具と併用可能ですか?
スリングは牽引用具との使用は禁忌ではなく、施設のプロトコルまたは標準に従って使用できます。
骨盤骨折を整復しようとする際に、張力を制御しないことで起こり得る有害作用は何ですか?
4つの一般的なカテゴリー:過矯正(過剰な力による)、不完全整復(力不足による)、皮膚壊死(過剰な力による)、腹部コンパートメント症候群(過剰な力による)。それぞれのカテゴリーは、被った損傷および傷病者の解剖学的構造と生理学な違いによって、傷病者ごと、それぞれのリスクがあります。
サムスリング IIの使用方法では、装着のために傷病者を横向きにローリングする必要はありますか?
いいえ。一部の骨盤スリングとは異なり、サムスリングは、傷病者の下でスライドさせて、適切な位置に配置します。
- 現場とERで実際に使用され、医科学的に安全で有効な骨盤固定がなされることが証明されている。
- バックルにベルトを通し両サイドに引くのみ。クリック音で適正張力を知らせる。
- 締め過ぎることなく/締めたらないことはなくサムスリングが張力を加え、骨盤全面を安全に固定する。
- 前面はカテーテルなどの処置を妨げず、背面は移動を妨げない。
- サムスリングは伸び縮みせず、通常の洗濯程度で何度でも使用できる。
ISO 13485:2003
NSN#6516-01-509-6866
ASTM標準F-1428-04合致
特許6554784/CE認定
サムスリングとは何か
サムスリングは骨盤固定専用副木です。米国を例にとると自動車事故、落下事故あるいは圧座事故による骨盤の損傷は出血に起因する死亡率の25%にも達します。サムスリングは骨盤を外周から圧迫固定し危険な出血を止める有効な応急手当装具です。プレホスピタル時にも入院後にも、誰が操作してもサムスリングの特許バックルは臀部サイズに応じた適正ニュートン値で自動停止し最適の固定圧力を維持します。Bone & Joint Surgery誌、Trauma Injury誌、EMS Service誌、ASTM-Int’l(アメリカ国際材料試験協会)等などがEBM(Evidence Based Medicine)に基づいてその仕様と効用を医科学的に検証し認定した骨盤固定専用副木です。
骨盤の固定・安定化の重要性
JATECが指導する初期診療・骨盤外傷の扱い(Diagnosis and initial management of pelvic fractures)は、「骨盤骨折は鈍的外傷患者の出血性ショックの原因として常に考慮せねばならない致命的損傷の一つである。(中略)骨盤外傷の致命率向上には(中略)速やかに止血対策を講じることが重要である。(中略)止血は骨盤骨折の固定安定化を優先する。(中略)救命救急センターに搬入された不安定型骨盤骨折患者で骨折部の固定が行われていない場合、ストレッチャーからCT台または血管造影台に移動しただけ血圧が低下する症例を経験したことのある救急医は少なくないであろう」と、骨盤骨折に伴う出血の危険性と骨折部の早期固定安定化の重要性を指摘しています。
スタンダードプロトコール
New Concepts in the Prehospital and ED Management of Pelvic Fracturesによれば、世界の外傷外科医は骨盤骨折の受傷後の速やかな安定化の重要性に同意しています。骨盤骨折は後腹膜出血を伴い死亡率が高く自動車事故に共通した死亡原因の一つです。危険な出血の可能性ゆえに、受傷者の臀部に対する何らかの外周帯等の適用はスタンダードファーストエイドプロトコールに含まれています。
そのための固定装具がある
JATECが指導する初期診療は「骨盤骨折の固定にはさまざまな方法があるが、前後圧迫外力による回旋不安定型(いわゆるopen book型)や垂直不安定型では(中略)骨折部を安定化する必要があり(中略)その目的のために製品化された固定装具による整復固定が有用である」と、サムスリングの有効性を指摘してます。
救命率の向上
サムスリングはBone & Joint Surgery誌あるいはEMS Service News誌などが唯一医科学的に認定する骨盤輪外周圧迫整復装具PRCCSD(Pelvic Ring Circumferential Compression Stabilization Device)です。TRAUMA Injury誌発表のEmergent Stablilization of Pelvic Ring Injuries by Controlled Circumferential Compressionと題したClinical Trialは、サムスリングがその自動管理された張力により過剰圧迫することなく損傷した骨盤輪を効果的に固定すると結論しています。また、EMS News Service誌掲載のThe Pelvic Fracture Stabilization in the Fieldはサムスリングが受傷直後に現場で装着されれば骨盤損傷に伴う出血を未然に防ぎ救命率の向上につながると指摘しています。
サムスリングの発売と改良
サムスリングは非侵襲型の骨盤骨折固定整復用具としてアメリカを中心に全世界の救命救急センター、整形外科並びに救急隊員により外傷の現場で実務使用されています。アメリカでは2003年9月のリリース後16ヶ月で約10000本販売されています(2005年2月現在)。この間にアメリカ国内だけで少なくとも10000回使用されているはずですが、一度としてコンプレッションレベルについて苦情など受けたことはありません。(Dr.Scheinberg)
その後、サムスリングにいくつかの改良が行われました。その1は従前からのX線検査対応とCT検査対応に加えてMRI検査対応にしたこと。その2は、患者の臀部外周寸法の違いに対応するために、L/M/Sの3サイズを揃え、さらに尿道カテーテルやインターベンショナルラジオロジーなどに対応し易いように装着時のベルト面前方を細く狭くしました。各モデルはそれぞれ臀部サイズ別に張力オートストップの適性ニュートン値が与えられています。言うまでもなく、この改良後もオートストップするコンプレッションレベルについて一度として苦情あるいは合併症の報告を受けたことはありません。その緊急性目的を達成するために、各救命センターあるいは救急隊はL/M/Sの3モデルをそれぞれ1~2常備しています。(Dr.Scheinberg)
ホスピタルユース&プレホスピタルユース
サムスリングは入院後に医師によって装着された際はもちろんのこと、救急隊員が事故現場で安心して患者に装着できる簡単な用具として開発製造されています。TRAUMA Journal誌とEMS News誌は サムスリングの装着が患者の痛みを軽減し搬送を安全容易にしていると指摘しています。大事なことは、サムスリングのオートストップバックルが誰がどこで操作しても安全で最適な張力ニュートン値を自動確保することです。
国際標準仕様
ASTM-International(アメリカ国際材料試験協会)はPRCCSD の標準仕様を規定しています。ASTM-Int’l F2428 Standard Guide for Selection and Use for Pelvic Ring Circumferential Compression Stabilization Devices (PRCCSD)によれば、例えば3.4項-PRCCSDの臀部外周装着位置は大転子あるいは恥骨結合部の高さを中心にすべきで、7.1項-PRCCSDは患者装着時に骨盤輪に対して張力がコントロールされ効果的で且つ安全な外周圧迫固定力を適用できるものでなければならなくて、7.2項-PRCCSDによって供給されるコントロールされた外周圧迫固定力の効率と安全性は医科学的に検証されたものでなくてはならない、と規定しています。サムスリングはこの国際標準仕様に合致した唯一の製品です。
適正比較
他にも非侵襲型の用具はさまざまあります。- 例えば、バキュームバンデージ、MAST(military anti-shock trousers)、 ラッピングシート、ダラスバインダー、T-POD等です。ただし、これらはいずれもサムスリングのようにEBMに基づき安全性と有効性の証明を得たものではありません。この点についてSt.Joseph’s Hospital Reportは、さらに「1.装着位置が明確に指示されている/2.整復&安定に必要且つ適切な張力が維持される/3.安全な張力が維持される/4.安全且つ適切な張力が管理されている/5.臨床レポートが正規の権威医科学誌(Peer-Review誌と呼ばれます) に発表されている」を挙げてサムスリングと他の用品との違いを指摘しています。
骨盤骨折に起因する、出血の止血と整復固定
June 2014 Accord International
Sam Medical
公表された2つのクリニカルスタディーを紹介します。
サマリー
- サムスリング不処置受傷者は処置済み患者に対してほとんど5倍の輸血量を必要とした
- サムスリング処置受傷者はICU所要滞在日数が56%減少した
- サムスリング処置受傷者は入院所要日数が65%減少した
- サムスリング処置受傷者は致死的出血に至らずRBC輸血量は最小に留まり入院日数は最小であった
ケーススタディー#1:
American Journal of Emergency Medicine によればChang Gung Memorial Hospital(台湾) で53 ヶ月間に転院を受け入れた585 名 の骨盤骨折患者の事後経過を発表した。転院は高度治療のためであった。スタディーはサムスリング処置後転院されたものと未処 置者に区別して比較された。23%は不安定型で残りは安定型骨盤骨折患者であった。
不安定型骨盤骨折患者に於いて下記の所見が示された。
- サムスリング未処置患者が平均1954mL の輸血を要したのに対してサムスリング処置患者の輸血量は平均394mL であった。
- ICU 処置期間と入院期間共にサムスリング処置患者に於いても大幅に短縮された。
・ICU 処置期間は、サムスリング不処置患者の平均11.8 日に対してサムスリング処置患者は平均6.6 日(56%減)であった。
・入院期間は、サムスリング不処置患者の平均19.5 日に対してサムスリング処置患者は平均9.4 日(48%減)であった。
安定型骨盤骨折に於いては
- サムスリング未処置患者が平均231mL の輸血を要したのに対してサムスリング処置患者の輸血量は平均120mL であった。 すなわちサムスリング不処置患者は処置済み患者に比して殆ど2 倍の輸血量を必要とした。
- ICU 処置期間と入院期間共にサムスリング処置患者に於いても大幅に短縮された。
・ICU 処置期間は、サムスリング不処置患者の平均3.4 日に対してサムスリング処置患者は平均1.7 日(50%減)であった。
・・入院期間は、サムスリング不処置患者の平均10.4 日に対してサムスリング処置患者は平均6.8 日(65%減)であった。
このスタディーはサムスリングの装着が安定型/不安定型を問わず有効であったと結論するのみならず、サムスリングは完全非浸襲 で適用が容易でプロヴァイダーに格別のトレーニングを必要とせず、オートストップバックル機能は患者の意識の清明/不清明に拘 わらず安全に対応し、痛みを和らげ安全な移動/搬送に有用であることを実証した。
以上は、Fu C-Y, et al, Pelvic circumferential compression devices benefit patients with pelvic fractures who need transfers, Am J Emerg Med (2013),より抄訳した。
ケーススタディー#2:
ドイツ骨盤損傷レジストリー(German Pelvic Trauma Registry)(期間:2004 年4 月30 日~2012 年1 月19 日)のデータベース 6137 名から、骨盤骨折患者についてサムスリングとシーツラッピングとC-クランプ処置の治療効果が記録された207 名(3.4%) を抽出し比較した。C-クランプが多く用いられ(69%)、続いてシーツラッピング(16%)、サムスリング(15%)であった。年齢の中央 値はサムスリング=26 歳、シーツラッピング=47 歳、C-クランプ=42 歳であった。修正不可能なデータの分析結果が示したもの は、シーツラッピングに比較して、サムスリングは骨盤骨折に直接起因する死亡を減少させる、輸血の適応を減少させる、骨盤整 復後の入院治療日数を短縮させる等であった。
- 致死的骨盤出血の割合はシーツラッピング処置時が23%と最も高く、サムスリングは4%、C-クランプは8%であった。致死的 骨盤出血が最小であったのはサムスリングであった。
- サムスリング処置患者の入院治療日数は平均30 日、C-クランプは46 日、シーツラッピングは56 日であった。
- 入院後6 時間以内に輸血を要したのはシーツラッピングでは10 例、C-クランプで7 例、サムスリングでは3 例であった。サム スリングは輸血量が最も少なかった。
以上は、Pizanis A, et al. Emergency stabilization of the pelvic ring: Clinical comparison between three different techniques. Injury (2013),より抄訳した。