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EMSニュース NO.102

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病院前外傷:トリアージ・治療・搬送の、今日の見解 / 外傷性脳損傷はシンプルに!

EMS1 2023/3/30掲載

TBI傷病者における3つの “H BOMBS(爆弾) “の回避は、生存率を有意に改善する

「H-bombs = hypoxia:低酸素、hypotension:低血圧、hyperventilation:過換気」
Devin Shumway(MD)、Casey Patrick(MD)、Robert Dickson(MD)

外傷性脳損傷(TBI)は一般的な損傷パターンであり、重篤な罹患率と死亡率をもたらす。脳組織の損傷は、脳の機能に影響を与え、死亡率と生活の質の両方に長期的な影響を与える可能性がありうる。Excellence in prehospital injury care:病院前外傷ケアでの良好性」(EPIC)研究などの最近の研究では、病院前の積極的な酸素化状態や血圧の管理を積極的に行うことで、TBIの転帰が改善することが示されている。 EPIC研究グループは、州全体のさまざまな病院前のTBI傷病者を対象とした外傷登録に基づく研究を計画した。当初の研究対象は、21,000人以上のTBI傷病者で、アリゾナ州内の130の救急医療サービスを含む TBI傷病者を対象とした。 EPICはアリゾナ大学で実施され、TBI傷病者(前群)の5年前の治療と転帰と、これらの傷病者のケアを改善するために州全体を対象とした介入プロトコル(後群)を実施した後の同様の脳損傷傷病者のグループを比較したものである TBIプロトコルの実施後、研究者は介入前の傷病者と比較して、介入後の傷病者の罹患率、死亡率、神経損傷の生存率をモニターした。その結果、重症のTBI患者において、「H-bombs」(hypoxia:低酸素、hypotension:低血圧、hyperventilation:過換気)と呼ばれるものを積極的に防止すると、生存率が著しく向上することが確認された。

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JAMA:The Journal of the American Medical Association

EPICから非常に明確になったことは、TBI傷病者における酸素化状態の積極的な維持の重要性である。EPICのデータでは、SpO2が90%未満の低酸素症が1回でも発生すると、死亡率が7倍も上昇することが示された。低酸素症の予防策としては、早期の酸素投与、気道障害に対する BVM、および/または、他の基礎的な介入が失敗した場合の気管内挿管/上気道確保が挙げられた。観察された生存率の増加は、早期酸素投与で低酸素症を予防することによって達成された。 新しい機器や、通常の管理方法からの大きなパラダイムシフト(方針転換)は必要なかった。

EPICから解ったこと

TBIが疑われるすべての傷病者には、最低限、非再呼吸器による高流量酸素を投与されるべきである。 さらに重要なことは、EPICのプロトコルにあるように、高度気道管理は、従来のBLSによる気道管理に失敗した場合にのみ考慮されるということである。 酸素飽和度90%未満の低酸素性の発症は、重傷のTBI傷病者の転帰を著しく悪化させることに関連するためである。 アリゾナでの介入による血行動態の面で、低血圧を防ぐために、この研究では晶質液がEMSによって使用された。低酸素血症と同様に、 90mmHg未満の数値が1回でも出ると、死亡率が7倍上昇するということだった。 複数の研究により、 TBI傷病者の血圧を維持することが神経学的に有益であることが示され、これらの傷病者にとって「理想的な」血圧はどこにあるのか、現在も研究が続けられている。 最後に、これらの傷病者の換気状態も重要である。 過換気は、脳血管を収縮させ、頭蓋内圧を低下させることにより、これらの傷病者に有益であると以前は考えられていた。 しかし、この方法はTBI傷病者にとってほとんど有益ではなく、有害であり、死亡率を高める可能性さえあることが複数の研究で証明されている。 したがって、人工呼吸中は、呼気終末波形を使用・監視し、35~45mmHgの間に保つことが不可欠である。


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これらのデータが救急隊員に与える影響は、決して軽視できるものではない。 他の複雑な病状(例:院外心停止)と同様に、時として、最もインパクトのある傷病者への介入は、私たち救急隊員が毎シフトで行っている基礎的なケアの中に見出される。

*1:Spaite DW, Hu C, Bobrow BJ, Chikani V, et al. “The effect of combined out-of-hospital hypotension and hypoxia on mortality in major traumatic brain injury.” Ann Emerg Med 2017 Jan;69(1):62-72.
*2:Spaite DW, Bobrow BJ, Keim SM, et al. “Association f statewide implementation of the Prehospital Traumatic Brain Injury Treatment Guidelines with patient survival following traumatic brain injury: The excellence in prehospital injury care (EPIC) study.” JAMA Surg. 2019;154(7):e191152. doi:10.1001/ jamasurg.2019.1152

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