EMSニュース No.109

JEMS Journal of Emergency Medical Services 2024/5/23掲載

視力が危険にさらされるとき〜眼の外傷に対する救急医療の3つのステップ

ロナ・G・ミラー医師、エリザベス・L・フェイガン医師、緊急医療学会フェロー、米国救急医学会フェロー

はじめに

米国では毎年200万件以上の眼の外傷が発生しており、救急外来への搬送件数は約30万件になる。眼の外傷は視覚障害の原因として白内障に次いで第2位である。 眼は「非常に損傷に弱い」部位であり、視力低下は悲惨な結果をもたらすことが多い。
多くの眼の外傷は時間との戦いである。 それにもかかわらず、救急医療/外傷学の主要な資料、救急医療モデルガイドラインや標準化されたカリキュラムでは、このトピックについて、ほとんど示されていない。 救急医療スタッフは、限られた設備やキャパシティで対応しなくてはならないが、適切な評価、エビデンスに基づく迅速なケア、適切な施設へ患者の緊急度や重症度に応じて処置や搬送を行うトリアージなどのステップを踏むことで、損傷の進行を最小限に抑え、視力を救うことが可能になる。
本稿では、一般的な救急医療の重要なメカニズムをいくつか取り上げるとともに、救急医療における眼の外傷へのアプローチのための新しい3段階ステップを紹介する。

救急医療サービス(EMS)による眼の外傷へのアプローチ

救急現場での評価

救急現場において眼の外傷は記録されてはいるものの、その割合は50%程度であり、多くの状況や場面において、より慎重な記録と評価を行うべきである。眼に関する外傷原因には、以下のようなケースが考えられる。

  • 産業、職場、家庭、娯楽の場面、特に洗浄用化学物質への曝露
  • 顔面および眼への直接外傷
  • 外傷性脳損傷(TBI)
  • 爆発による損傷
  • 圧迫性鈍的外傷(眼球破裂を引き起こす可能性がある。)
  • 熱傷
  • 金属と金属の接触(明らかな外傷所見がなくても破片が眼内に侵入することがある。)
  • 多臓器外傷
  • 意識不明の患者で視覚障害を報告できない場合もある

特に、化学物質への曝露が疑われる場合は、適切な個人用保護具(PPE)を着用し、現場と救助者の安全を確保することが最優先事項となる。ただし、たとえ眼の外傷が明白で重度であり注視すべきものであっても、まずは患者の生命の危険を直ちに回避する必要がある。

生命の即時的な危険が排除または対処できた場合は、対応を眼の外傷に集中させることができる。眼の外傷の兆候や症状については、別の箇所で詳しく説明する。
外傷の全容は救急外来での完全な眼科検査によってのみ判明する。しかし、救急医療サービスの臨床医は、重要な補助的治療を提供しながら、緊急で、かつ重要な視力を脅かす多くの外傷の検証、治療、およびトリアージを行うことができ、そうすべきである。
 このプロセスを導くために、私たちは3段階のEMSステップを開発した。このツールは、国民のあらゆる健康上の問題、疾病に対し、総合的・継続的、そして全人的に対応する地域の保健医療福祉機能であるプライマリケア医向けの同様の意思決定ツールと、軍事医学の「ABC」記憶術を参考にして構築した。 図1のフローチャートは、この段階的かつ構造化されたEMSに重点を置いたアプローチを示している。

図1:眼の外傷に対する救急処置の3ステップ決定ツール。(「SHIELD&SHIP」という表現は軍事医学から採用)

両眼を評価し(見逃しを避けるため)、緊急度の高い順に以下の3つの基本的な質問を行う。(図1右側赤字部分)

  1. 化学物質による眼の曝露があったか、またはその疑いがあるか?
  2. 眼球破裂があったか、またはその疑いがあるか?
  3. 視力を脅かす可能性のある他の外傷、特に眼窩コンパートメント症候群(OCS)があるか、またはその疑いがあるか?

いずれかの質問に「はい」と答えた場合、図1のフローチャートは各主要な外傷に対する基本的な救急処置とトリアージのガイドラインを示している。

視力に特化した臨床評価には、少なくとも4つの基本的なステップがある。(図1の※1)

  1. 視力、できれば4象限すべてにおける視野検査
  2. 瞳孔(大きさ、形状、反応性)
  3. 感覚(両側の額、頬、鼻の側面、上顎のピン先で触れる感覚と軽い接触感覚を評価)
  4. 外眼筋運動(EOM)、検査中の複視に関する患者の報告を含む。

各評価段階の実施時期や実際の実施可能性は、現場の状況や患者の安定性によって異なる。しかし、これらの評価は、患者ケアと治療方法の両方の観点から重要である。例えば、受傷後の初期の視覚確認を適切に行う事で、最終的な視力結果を精度高く予測できるようになる。また、異常な眼球運動や非対称性眼球運動、複視、同側の頬/鼻の側面/上の歯の感覚低下は、筋肉や神経の巻き込みを伴う眼窩底の「吹き抜け」骨折の存在を示している可能性がある。これは、初期の診察では容易に明らかにならない可能性があり、かつ時間との戦いとなる損傷の例である。

一般的な治療および補助的治療

標準的なエビデンスに基づく外傷治療に加えて、眼の外傷が明らかであるか、または疑われる場合には、以下の対応を行うことが重要である。

  • 患者を絶飲食状態に保つ。
  • 頭部を15~30度挙上する(眼の洗浄中は除く)。
  • 非経口鎮痛薬で疼痛を治療する(アスピリンまたはNSAIDは避ける)。
  • 非経口吐薬で吐き気を積極的に治療し、嘔吐を予防する。
  • 局所麻酔の使用を検討する。ただし、入手可能で、かつ適応がある場合に限る。
    • 眼球破損が確認されている、または疑われる場合は、局所麻酔薬の使用は絶対禁忌である。
    • 軽度な機械的外傷(角膜の擦過傷など)には害はないが、局所麻酔薬の日常的な使用を支持する直接的なエビデンスはほぼないため、局所麻酔薬の使用の決定は、完全な眼科検査の後、救急医療の専門家に委ねるのが最善である。
    • 化学物質への曝露の場合、洗浄中に患者の快適性を向上させるために使用することが推奨される。

救急医療における眼の外傷のケアのための3つのステップ(図1左側:赤字)

ステップ1:化学物質への曝露の有無 →「ただちに洗浄し、迅速に処置する」

化学物質への曝露は、一刻を争う眼の外傷原因の第1位であり、視力にとって非常に深刻な脅威であるため、眼の外傷の救急評価および治療における最優先事項である。あらゆる腐食性化学物質への曝露に関する詳細は、ここでは説明しきれないが、包括的な関連情報のウェブベースが存在しており、リアルタイムに利用することが可能である。酸および、特にアルカリは、日常で広範に使用されており、急速で深刻な損傷を引き起こす可能性があることから、特に注意が必要である。酸、アルカリ、pH、および一般的な発生源と一般的な例は、図2および図3に示されている

図2:一般的な酸性物質、pHと発生源

図3:一般的なアルカリ性物質、pHと発生源

アルカリによる損傷は、酸への暴露よりも表面的な凝固壊死などは起こりにくいものの、急速で深部まで及ぶ液化壊死を引き起こすため、より深刻になる傾向がある。しかし、フッ化水素酸(HF)(家庭用、陶磁器用、自動車用、石材用などの強力な洗剤やガラスエッチング製品に含まれる)は、アルカリ性物質に近い性質を持つため、急速で深い壊死を引き起こす可能性がある。フッ化水素酸が、皮膚や呼吸器に大量に曝露された場合、全身毒性(低カルシウム血症、痙攣、心不整脈など)を引き起こす可能性もある。
呼吸器系への影響への対処後、酸、アルカリ、催眠ガスのような群衆制御剤、その他の腐食性化学物質による眼への曝露に対する緊急処置には、「ただちに洗浄、処置し、速やかに搬送する」ことが必要となる。これは、最終的な視覚予後が最初の洗浄までに要した時間に最も左右されるため、極めて重要である。

(図1の※2)

  • 患者を原因物質から離す。
    • 皮膚の除染の必要性について検討する。
  • 詳細な視力検査、瞳孔、運動性、感覚の検査は延期する。
  • 患者を仰向けに寝かせ、少なくとも2リットルの液体【「無毒の液体」、「等張性晶質液(生理食塩水や乳酸リンゲル液など)」、滅菌水、冷たい水道水のいずれか】を両眼に連続して流し、洗浄する。
    • 現場で直ちに開始し、搬送中も継続する。
      • アルカリ熱傷の場合は最低2~3時間連続して洗浄する。
    • pH試験紙が利用できる場合は、洗浄の前後に眼のpHを測定するが、この行為により洗浄を遅らせてはならない。
      • 目標pH:7.0~7.5
      • 即興医療:尿試験紙の底の部分(pHインジケーター)以外を切り取る。
    • 酸性またはアルカリ性の液体を使用してpHを「中和」しようとしてはならない。
    • 可能であればコンタクトレンズを外す(洗浄により外れやすくなる場合があるため)
    • 最大20リットルが必要になる場合がある。
    • モーガンレンズ®(強膜レンズ)が利用できる場合は、患者の快適性を向上させるために、局所的な眼科用麻酔薬(プロパラカインまたはテトラカインなど)の使用が推奨されるが、この行為により洗浄を遅らせてはならない。
      • 点眼麻酔薬が利用できない場合は、防腐剤無添加の2%心臓用リドカインを1リットルあたり100mg(10mL)添加することを検討するが、洗浄を遅らせてはならない。
    • モーガンレンズ® が入手できない場合は、アダプターまたは三方活栓を使用して、鼻カニューレ用酸素チューブを標準的な静脈内チューブに接続することができる。
    • 幼児など対応が難しい患者には、身体拘束または処置に伴う鎮静が必要となる場合がある。
    • 即時的な水洗浄の例外:
      • 乾燥石灰(生石灰、酸化カルシウム):洗浄前に乾燥した粒子を払い落とす。
      • →酸化カルシウムは水と反応して非常に強力なアルカリを形成するため。
      • 湿ったプラスター/セメント :可能であれば、手動洗浄の前に、綿棒で目に見える物質を除去する。→これらの物質は残留物質を残す可能性が高いため。
      • フェノール :非常に濡れた、水に浸したガーゼで粗い物質を優しく拭き取る。
      • 完全な除去には救急医療サービスでは利用できない溶剤が必要な場合
    • 水は決して使用してはいけない場合:例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの元素金属を洗浄するために使用しないこと。
      • これらは水に触れると燃焼したり、有毒な副産物を生成する。
  • 特に化学物質の種類、SDS(安全データシート)、負傷のタイミング、目の保護具の使用、実施された応急処置、特に洗浄が開始された場合の情報を入手する。
  • 絶飲食を維持し、非経口的に疼痛および吐き気/嘔吐を治療する。
    • 高用量のケタミン(2~5mg/kg)は、眼圧上昇および眼振を引き起こす可能性があり、議論の余地は残るものの、より低用量の鎮痛用量(0.1~0.4mg/kg)は安全であると考えられている。
  • 適切な救急医療施設への搬送を迅速に行う。その場合は化学物質の容器/包装/SDSまたはその他の入手可能な関連書類を添付する。
    • 群衆制御剤などの場合は、通常速やかな洗浄を行うことで、速やかに効果が現れ、速やかに回復する事ができる。曝露後30分以上経過しても持続する兆候や症状がある場合は、傷害の有無を確認するために救急医療施設への搬送が必要である。

(↑ここまでが図1の※2の説明)

特別な考慮事項:フッ化水素酸(HF)への曝露で皮膚または呼吸器への曝露を伴う場合、不整脈となる事が一般的である。目の洗浄に加えて、心電図の継続的なモニタリングと不整脈の「二重の危険性」に対する治療が必要となる。

フッ化水素酸曝露のその他の特徴として、以下が挙げらる。

  • 症状の発現が遅れる場合があり、組織損傷が急速に進行することもある。
  • 非比例的な激しい疼痛が生じ、非経口治療が必要となる。
  • グルコン酸カルシウムゲルおよびグルコン酸カルシウム洗眼液による応急処置が必要となり、救急医療による緊急搬送が必要となる。

ステップ2:眼球破裂しているか?「保護して搬送する(SHIELD&SHIP)」

鈍的外傷、貫通外傷、爆風による眼の外傷の多くは通常の身体検査で明らかになるが、常にそうなるとは限らない。そのため、眼における救急医療の評価における第2の優先事項は、眼球破裂の可能性を考慮することである。これは、貫通外傷、鈍的外傷(軽度の打撃や転倒でも)、爆風による外傷(一次爆風による外傷または破片による外傷)によって引き起こされる可能性がある。
眼球破裂であることが判明している、またはその疑いがある場合のEMSの管理は、軍事医療から採用された「保護して搬送する」というアプローチが必要である。主な概念は以下の通りである。

「保護して搬送する」(図1の※3)の対応

  • 眼球やその周囲に触らない。
  • 歩行や移動を制限する。
  • 可能であれば、両眼の視力(VA)を評価し、記録する。
  • 患者の頭部を15~30度挙上する。
  • 傷を負った目に埋没した異物を取り除こうとしてはならない。
  • 傷を負った目に局所麻酔薬を含め、何も入れてはならない。
  • 傷を負った目を保護し(眼帯ではない)、目に圧力がかからないようにする。
    • アイシールドや器具がない場合は、使い捨ての紙コップ、眼鏡、保護用眼鏡を使用。
    • テープは頬と額のみに貼り、眼窩や眼球には貼ってはならない。
    • シールドの下に物を置いてはいけない。
    • 負傷した目に触れてはいけない。
  • 眼球の動きを抑えるために、負傷していない目を保護、または覆うことを検討すること。
  • 非経口的に、鎮痛および吐き気/嘔吐の治療を行うこと。
    • ケタミンの使用については、前述の「化学物質による損傷」の項を参照すること。
    • 嘔吐感、嘔吐、咳、いきみ、息を吐きださせるバルサルバ法はすべて眼圧を上昇させ、眼球内容物の突出や損傷の悪化につながる可能性がある。
  • 適切な救急治療室へ搬送する。

ステップ3:視力を脅かす可能性のある他の損傷があるか? 「保護して搬送する」

化学物質による損傷や眼球の露出による損傷が疑われない場合は、上述のより詳細な4段階の評価を実施し、視力を脅かす可能性のある、または一刻を争う他の損傷がないかを確認する。 眼窩コンパートメント症候群(OCS)は、化学物質による眼損傷と同様に、一刻を争う眼の損傷である。 OCSは眼窩内圧の急速な上昇を特徴とし、外傷および非外傷の両方の状況で発生する可能性がある。症状には、眼球突出、痛み、「岩のように固い」まぶた、視力低下、眼輪筋運動の低下、瞳孔の異常などが含まれる。OCSは眼の非常に緊急性の高い事態であり、眼窩内圧の上昇を緩和する処置が90~120分以上遅れると、永久的な視力低下が起こる可能性が高い。
最後に、視野評価では、前房出血(前房内出血)、角膜異物、角膜蜂刺症、眼瞼裂傷、またはその他の診断など、緊急を要する視力喪失の可能性が低い損傷が示唆される場合がある。この場合、患者は「保護して搬送(SHELD&SHIP)」ガイドラインに従って管理され、救急医療サービス(EMS)による緊急搬送により、救急外来で眼科的評価、治療、経過観察が行われるべきである。

熱傷、レーザー、放射線

熱傷:呼吸器障害およびその他の外傷(特に生命の危険)を考慮する必要がある。患者は標準的な熱傷プロトコル/ガイドラインに従って治療されるべきである。過剰な輸液による蘇生は、OCSを助長する可能性がある。

レーザー照射:まばたきは眼の損傷を防ぐか軽減させるが、他の部位への影響も考えられる。

放射線:紫外線(UV)放射による眼の損傷(溶接、太陽灯、日焼けマシンなどによるもの)は珍しくはない。COVID-19パンデミック中には、UV殺菌装置の使用による損傷が急増し、視力への脅威となった。

特別な考慮事項

複雑かつ複合的なメカニズ

一部の眼の外傷は、化学的、鈍的外傷、穿孔、熱などの様々な複合的な原因から発生する。 代表的な例としては、花火やエアバッグ(特にエアバッグが破裂した場合)などがある。「洗浄して処理する」または「保護して搬送する(SHEILD & SHIP)」という判断は、オンラインを活用しながら医療管理と相談し、状況に応じて決定しなければならない。

小児および高齢者

小児の眼の外傷については、多くの検証で詳細な情報が提供されている。特に、この年齢層では、病歴と身体検査の結果が一致しない場合、事故以外の外傷を考慮する必要がある。具体的には、虐待による頭部外傷(AHT)では、眼窩周囲の皮下出血(「アライグマの目」)および/または眼瞼浮腫、結膜下出血、眼窩骨折が認められることがあるが、外眼部に異常が認められないからといって、この診断が除外されるわけではない。
「レッドアイ」(または「ピンクアイ」)は、診断名ではなく、症状を説明する用語である。感染症や炎症性疾患に加え、異物、外傷、化学的損傷も、レッドアイの鑑別診断において考慮すべきである。また、未就学児や幼児では、洗濯洗剤の粉末が、洗浄を必要とする化学的眼損傷の一般的な原因となっている。
高齢患者の場合、特に過去に眼科手術を受けた患者においては、地上での転倒が眼球破損の第一の原因となっている。したがって、高齢の転倒患者を診察し、一刻を争う視力喪失の危険性のあるこの外傷を除外することが重要になる。この年齢層では、特に疑わしい外傷パターンが見られる場合、偶発的でない外傷も考慮する必要がある。

記録

病歴の記録の主な要素には以下が含まれる:
一般病歴、眼の病歴(可能であれば)、負傷のメカニズム、負傷のタイミング、保護眼鏡の使用、目撃の有無、救急隊到着前の応急処置、破傷風の病歴。

救急医療処置の記録の主な要素には以下が含まれる。

  • 化学物質:化学物質の種類、洗浄のタイミングと量、洗浄前後のpH(可能であれば)、痛みと吐き気/嘔吐の治療
  • 鈍的外傷、刺し傷、爆風:可能な場合の総VA(視力検査)、負傷した眼の遮蔽(「パッチ療法」ではない)、疼痛および吐き気/嘔吐の治療、眼球突出、眼窩コンパートメント症候群(OCS)、眼窩吹き抜け骨折、虹彩脱出、その他の視力脅威となる外傷の可能性を考慮する。

上記4段階の総合現場評価(両側視力、瞳孔、EOM、頬/額の感覚)の要素が省略された場合は、その省略の根拠を文書化すべきである。例えば、化学物質による眼の損傷の場合、即座に洗浄を開始するために、視力、瞳孔検査、EOM検査、顔面感覚の記録は後で行う事が適切である。

トリアージの考慮事項と継続的なケア

特に化学物質への曝露、OCS、眼球損傷の可能性がある場合は、「時間」が最も重要である。搬送先の決定は、常に救急医療サービス機関の臨床ケアガイドライン、地元の病院の能力、その他の症例特有の要因によって決定すべきである。
目の損傷に対する不耐性、視力喪失の恐ろしい影響、および救急医療サービスによる目の外傷の評価と治療の限界を考慮すると、たとえ軽微に見える目の外傷であっても、すべての患者に対して、救急医療サービスによる搬送を実施し、救急治療室で完全に評価し、適切な治療を行い、専門家に紹介することを強く勧めるべきである。救急医療サービスによる搬送を拒否する場合は、地域のガイドラインとプロトコルに従って、入念に記録すべきである。

結論

救急医療サービス(EMS)による眼の外傷の評価、治療、およびトリアージには、3つのステップがある。 まずは、生命の危機への対処を行った後に、ステップ1では、化学物質への曝露の有無を評価し、曝露の事実またはその疑いがある場合は、ただちに「洗浄を行い、救急搬送を迅速化」する。 ステップ2では、眼球破裂している可能性を評価し、その事実、またはその疑いがある場合は、「眼球を保護し、搬送する(SHELD&SHIP)」アプローチをとる。ステップ3では、より詳細な評価を行い、眼球突出症候群やその他の時間的制約のある視力喪失の危険性のある損傷を診断する。眼球突出症候群やその他の時間的制約のある視力喪失の危険性のある損傷が認められる場合、同様の「保護して搬送(SHEILD & SHIP)」アプローチが用いられる。この3つのステップにより、救急医療スタッフは損傷の進行とそれに伴う視力喪失を防ぐことが可能である。

謝辞:著者は、専門的な原稿の査読を行ったビジェイ・ケトパル医師に感謝の意を表します。

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