(1)CAT対SAM-XTの止血帯:比較研究
(2)次世代のターニケット、より良いものはどれですか?
(1) CAT対SAM-XTの止血帯:比較研究
プレホスピタル救急医療 2020年2月掲載
東カロライナ大学 ゲリー・スミスら
序文:
異なったタイプのターニケットが研究されてきたが、新しいSAM-XTターニケット(以下「SAM」)についてのデータは少ない。本研究の目的は、ファーストレスポンダーの使用における、SAMとCATのターニケットの有効性を比較することだった。
方法:
前向き、無作為、単盲検試験を実施し、参加者は利き手1本でSAMかCATをもう一方の腕に自分で装着した。参加者は現在CATを用いている救急医療機関(以下「EMS」)、消防署の救急隊(「FD/EMS)、そして法執行機関(「LE」)から募集した。
測定には下記を含む:
自己適用から出血が止まったと目されるまでの時間、パルスオキシメーターの波形分析の評価において血流が止まるまでの時間、血流ゼロの状態に到達するまでにロッドを回す回数。 使いやすさと有効性に基づいて、参加者の好みを調査した。データはSPSSv24を用いて、T検定と一元配置分散分析(ANOVA)によって分析した。
(SPSSv24:著名な統計学ソフトの名称。)
結果:
61人のレスポンダーが研究に参加した。EMS、FD/EMS、LEはそれぞれ21、20、22人だった。34人がCATを、29人がSAMを用いた。参加者は83.6%が男性で平均年齢は35.8歳(標準偏差10.4歳)、経験年数の平均は11.1年だった(標準偏差9.8年)。
出血停止が知覚されるまでの時間における統計学的な違い:CATの平均23.5秒に対し、SAMは18.9秒。t(61)=2.37, p=0.021, 95%信頼区間[0.71, 8.46]
波形が消失するまでの時間:CATの平均16.1秒に対し、SAMは12.6秒。t(61)=2.13, p=0.037, 95%信頼区間[0.02, 6.92]
波形が消失するまでにロッドを回した回数:CATの平均3.1回に対し、SAMは1.5回。t(61)=6.83, p<0.001, 95%信頼区間[1.20, 2.19]
(t検定の数値:高ければ高いほど、グループの違いが偶然でない確率が高い。)
(p:グループの違いが偶然である確率、低ければ低いほど差は有意。)
(95%CI [a,b]:95%の信頼性で本当の差が下限aと上限 bの間に存在する。)
結果は所属機関にかかわらず均等に分散し、機関による有意な差はなかった。性別と経験年数も結果において有意な因子ではなかった。参加者はCATよりSAMを好んだ(SAMグループで83%、CATグループで68%)。研究の限界として、コントロールされてストレスのない模擬環境であり、利き手を使っての自己装着だったことが含まれる。
結論:
出血の停止が知覚されるまでの時間、パルスの波形が消失するまでの時間またはロッドの回転数において、SAMの装着の方が早かった。参加者は使いやすさと有効性で、より慣れたCATよりSAMを好んだ。
(2)次世代のターニケット、より良いものはどれですか?
2018年ミリタリーヘルスシステム研究シンポジウム
ハダサーメディカルセンター(イスラエル) ディーン・ナックマンら
概要
背景:コンバット・アプリケーション・ターニケット(以下「CAT」)はイスラエル国防軍が選んだターニケットである。これまでの研究は、CATの装着における主な失敗はロッドをねじる前にターニケットを緩く当てることだと結論を下した。これは新しい世代の現代的な戦闘用ターニケットの開発につながり、それらはデバイスが装着された際に発生する緩みを減らすようデザインされ、緩い装着を防いだ。
この研究の目的は、新しいターニケットのデザイン3つの有効性を評価することである。CAT第7世代、SAM-XT、SOF Tacticalはどれも、緩みを最少化することを目指している。第2の目的は、ターニケットを使用した際の、緩みと他の測定値との相関関係を評価することである。
方法:ターニケットトレーニング用のHapMedの足を用い、膝上での外傷性切断のシミュレーションを行った。ヘブライ大学医学部の軍事コースで学ぶ士官候補生60人が無作為にグループに分けられ、異なる順番で3種類のモデルを全て装着した。かけられた圧力、出血制御の状態、止血までの時間、失血量の推定、弛み、装着の順番を記録した。
結果: SAM-XTとCAT7を用いた場合にかけられた圧力の平均(±標準偏差)はSOFによる圧力より著しく高かったが(p<0.017)、両者の間には有意な差はなかった(p>0.05)。
SAM-XT:186.07mmHg ± 62.957mmHg
CAT7: 175.35mmHg ± 79.233 mmHg
SOF: 103.95 mmHg ± 101.301 mmHg
出血制御率も同様で、SAM-XTとCAT7がSOFより著しく良かった(p=<0.017)。弛みはCAT7とSAM-XTにおいて同様だったが(p>0.05)、SOFと比較して著しく少なかった(p<0.017)。
SAM-XT:73.3% 4.99mm± 3.48mm
CAT7: 67.7% 5.177mm± 3.4mm
SOF: 35% 8.950mm± 4.9100mm
緩みと出血制御率との間に強い負の相関関係が認められ(t検定、p<0.001)、圧力との間にもあった(p<0.05)。
成功時 3.24mm ± 1.54mm
失敗時 10.47mm± 3.36mm
結論:SAM-XTとCAT第7世代はどちらも圧力のかかり具合と出血制御率においてSOFTTより優れていたが、両者の間に有意な差はなかった。さらに両者は、前の世代のターニケットを用いた同世代の商品と比較して、成功率は向上した。