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EMSニュース No.94

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サル痘患者のケアと医療提供者の安全について救急隊が知っておくべきこと

レイチェル エンゲル・EMS1上級副編集長著
EMS1 2020/7/28 掲載

7月23日、世界保健機関(WHO)は、最近発生したサル痘について、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言した。その2日後に疾病管理予防センター(CDC)が発表したデータによると、米国では、3846例の患者が確認され、スペインの3100例を上回り、ほかのどの国よりも多くなっている。
全世界で18,000例以上の症例が報告されており、その大半は米国など、通常サル痘が見られない国で発生している。
患者数の増加が予想される中、サル痘の疑いがあるとの通報があった場合、医療提供者はどのような点に注意すればよいのだろうか。この記事では、最も一般的な症状、サル痘の疑いの発疹の見分け方、病院前の環境での患者への対処法について学ぶ。

サル痘とは?
CDCによると、サル痘はサル痘ウイルスによって引き起こされる病気で、天然痘に似ているが、より軽症で致死率は低いとされている。1958年に研究用のサルのコロニーで発生したのが、最初の発見とされ、1970年にコンゴ民主共和国で最初のヒト症例が記録された。
今回の感染流行以前は、アフリカ以外の地域では、この疾患が発生している場所に旅行した人の感染がほとんど              であったため、今回の流行は公衆衛生の専門家にとって懸念すべきものである。

最もよくみられるサル痘の症状は何か?
サル痘の症状は、通常、感染後1~2週間で現れるが、個人差があり、現在どの病期にあるかによっても異なる。症状は以下の通り。

  • 発熱
  • 頭痛
  • 筋肉痛・腰痛
  • リンパ節の腫れ
  • 悪寒
  • 極度疲労
  • 顔面、口腔内、または手、足、胸部、性器などにできた吹き出ものや水疱のような発疹
    すべての症状を経験する患者もいれば、発疹だけを経験する患者もいる。

サル痘の発疹はどのように見えるか?
サル痘の発疹は、人によって、または疾患サイクルの段階によって、見え方が異なる。

サル痘はどのように蔓延するか?
この病気は、発疹や体液に直接接触するほか、長時間の対面接触の際の呼吸器の飛沫によって感染することがある。この病気は身体的または性的接触でも感染する可能性があり、妊婦がウィルスに感染すると胎盤を通して胎児に感染する危険性がある。
また、発疹や体液に直接触れた衣服などに触れた場合にも、間接的に感染する可能性がある。
この病気は、症状の現れている人だけが他の人に感染させる可能性があり、典型的な症例では回復までに通常2~4週間かかる。専門家は、発疹が完全に治癒し、すべての水疱を新しい皮膚の層が覆うまで、感染力があると警告する。

サル痘はどのように治療されるか?
サル痘に特化した治療法はないが、天然痘の治療に用いられる多くの抗ウイルス薬が、サル痘の治療にも用いられることがある。
また、米国ではJYNNEOSとACAM2000の2種類のワクチンが入手可能であり、このワクチンは、ウイルスに曝露された後にこの疾患に感染するのを防ぐ可能性がある。
サル痘が疑われる症例に対して、救急隊員はどのようなPPE(個人防護用品)を着用する必要があるか?
最近の論文では、「サル痘の最新の集団発生に対する救急隊の対応」で国立新興病原体研修・啓発センター(NETEC)は、救急隊員の以下の着用を推奨している。

  • N-95マスク
  • ガウン
  • 手袋
  • フェイスシールドまたはゴーグルによる眼の保護具

サル痘が疑われる場合、救急隊員はどのように対処すべきか?
NETECは、救急車で患者を搬送する必要が生じた場合、サル痘の蔓延を防ぐために多くの防護策を推奨している:

  • ドライバーコンパートメントと傷病者コンパートメントを
  • 分離する
  • 患者コンパートメントに換気ファンがある場合は、強にする
  • 乗り物内の空気を循環させるのではなく、新鮮な空気を取り入れるよう設定する
  • 救急車を運転する医療提供者は、ドライバー室を閉鎖できない
  • 場合は、N-95マスクを着用する
  • 傷病者と接する医療提供者数を制限する
  • 衣服の着脱にはPPEチェックリストを使用する
  • 搬送後、病院内グレードの消毒剤で全ての表面を洗浄、消毒する
  • サル痘に汚染された廃棄物を、カテゴリーAの病原体廃棄物として処分する

対応後、医療提供者はサル痘の搬送が確認されてから21日間、病気の徴候および症状を監視する必要がある。

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