DA(Food and Drug Administration)諮問委員会がパルスオキシメーターの人種間差について会合を開催
ニューヨーク(AP通信) :マディ・バラコフ AP通信 サイエンスライターより
JEMS 2022/11/1 掲載
光を利用して血中の酸素レベルを測定するクリップ式機器は、最近の研究で有色人種の患者に機能しないことが示唆されたため、米国の規制当局で詳細な調査が行われている。
パルスオキシメーターと呼ばれるこの機器は、通常、指にはめ込み、治療の指針として世界中の病院で広く使用されている。COVID19のパンデミックの際には、家庭用も普及した。
しかし、最近のいくつかの研究では、人の皮膚の色素形成が測定値を狂わせる可能性があるとの懸念が示されている。2021年、米国食品医薬品局(FDA)は、ある研究により、機器が黒人患者の酸素濃度を過剰評価する傾向があることを明らかにし、不正確である可能性について警告を発した。
この研究を主導したミシガン大学の呼吸器科医のマイケル・スジョディング氏は、「このような一般的に使用されている機器に、矛盾が生じる可能性があるという事実は、私にとって衝撃的だった。」と述べた。「私は、この機器に基づいて多くの医療上の決定を下している。」
FDAは火曜日に、機器に関する「継続的な懸念」、患者・医師への勧告、正確性の測定方法について議論するために、専門家委員会を招集した。
FDAの医療機器・放射線保健センターのジェフ・シュレン所長は火曜日の会議の冒頭で、これらの機器の人種間差は「公衆衛生上、非常に重要だ」と言った。医療機器を使用するすべてのグループにとって安全かつ有効であることを確認する必要があると強調した。
酸素濃度は、手首の動脈から血液を採取して測定することもできる。この方法は正確さではまだ「ゴールドスタンダード」であるが、少し手間が掛かり、痛みも伴うため、パルスオキシメトリーを研究している医師でMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者であるレオ・セリ氏によると、それほど頻繁には行えないという。
それに比べ、パルスオキシメーターは、より迅速で、より容易で、より低侵襲である。
「この機器を指にはめ込むと、皮膚に2種類の波長の光が送られる。」と、パルスオキシメトリーを研究しているブラウン大学の博士学生、ルテンド・ジャカキラ氏は説明する。その光の吸収量を測定することで、パルスオキシメーターは血液中の酸素の量を推定する。
「問題は、皮膚の色調を担う天然の色素であるメラニンも光を吸収してしまうことだ。そして、機器がメラニンを考慮していないと、余計に吸収してしまい、測定値が狂ってしまう。」と、ジャカキラ氏は述べた。このことが市販されているパルスオキシメーターに影響を及ぼしていると思われることを示唆する証拠が続々と出てきている。
シェーディング氏の研究によると、白人患者と比較して、入院中の黒人患者では「潜在性低酸素血症」が3倍近く見られた。これは、採血から算出した酸素濃度が危険なほど低かったが、パルスオキシメーターの測定値は依然として正常であった。
追跡調査の結果、これらの間違いは健康に影響を与えることが明らかになった。患者が低酸素濃度を認識していなかった場合、最近のいくつかの研究によると、COVID-19の治療の遅れ、酸素供給量の減少、臓器不全および死亡のリスクの高さを意味する。
これらの結果はいずれも有色人種の患者により多くの影響を及ぼしていることがわかった。多くの医師にとって、自分たちが頼っている道具が人種間の不一致を助長しているかもしれないという考えは衝撃的なものだった。
シェーディング氏は「これらは、われわれが患者ケアに利用する基本的なバイタルサインである。もし、ある特定の患者群で、機器の精度がわずかでも低ければ、重大な結果をもたらすだろう。」と述べた。
過去数十年の小規模な研究では、皮膚の色調は機器にとって問題となる可能性があることが示唆されていたが、その懸念は明らかに「脇に置かれていた」と、最近のパルスオキシメーターの研究のひとつを率いたジョンズホプキンス大学の医師アシャラフ・ファウジー氏は述べた。彼や他の医師たちは、医療訓練の間にパルスオキシメーターの人種間差について学んだことはなかったという。
しかし、COVID-19のパンデミックは、医療機器および医療制度における人種間の不平等の問題により注意が集まるようになった。
「今では、医療格差が有色人種にどのような影響を及ぼすのか、もっと切実に認識されるようになった。われわれは、このような問題を実際に解決し、すべての人にとってより公平な医療を実現したいと強く思っている」と、ファウジー医師は述べた。
パルスオキシメーターが有色人種の傷病者に精度が低いという指摘に反論するメーカーもある。
パルスオキシメーターを病院に販売しているマシモ CEOのジョー・キアニ氏は、同社のデバイスの内部審査では、黒人患者の測定精度に大きな違いがあるという証拠は見つからなかったと語った。 彼は、パルスオキシメーターの測定値と採血の間の遅延など、他の変数が、パルスオキシメーターの精度に関する最近の研究に影響を与えた可能性があると述べている。
また、肌の色に合わせた新しい装置を開発する動きもある。
ジャカキラ氏と指導教官のキマニ・トゥーサン氏は、酸素を測定するために皮膚に当てる光の、様々な特性を調べ、パルスオキシメーターの改良に取り組んでいる。
技術的解決策はまだ研究段階にあるが、医療従事者にとって測定値が不正確であることを知ることは重要であると専門家は述べている。シェーディング氏は、自分自身の診療でパルスオキシメーターの測定値をあまり当てにしないようになったと述べた。しかし、彼はデータのひとつとしてそれを使っている。
専門家の中には、FDAの試験ガイダンスが更新されれば、今後のパルスオキシメーターが誰にでも使えるようになることを期待する者もいる。現行の基準では、試験群の少なくとも15%は「色素の濃い」皮膚を含むようにとされている。
デューク大学の肺救命救急医、A・イアン・ウォン氏は、「パルスオキシメーターのような機器を変えるのは「困難な戦い」かもしれないが、すべての傷病者に平等なケアを提供するためには必要なステップだと考えている。」と述べた。
「医学はちょっとしたアートであり、サイエンスでもある。医師の医療技術だけでなく、使用するツールも重要である。」とウォン氏は述べた。
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