2024/11/21 第33回 全国救急隊員シンポジウム(秋田市)

EMSニュース No.57

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重篤な四肢の外傷の出血を止めるためのターニケットの実用的な使用

ジョン・F・クラックMD、トマス・J・ウォルターズPhD、ディビッド・G・ベアーPhD、チャールズ・J・フォックスMD、チャールズ・E・ウェイドPhD、ホセ・サリナスPhD、 ジョン・B・ホルコム大佐MCら著

(米陸軍外科研究所・米国/テキサス州フォートサムヒューストン)
The Jounal of TRAUMA 2008;64:S38-S50

背景:我々はこれまでに現在の戦争ではターニケットが命を救うデバイスであることを示した。しかし、戦闘による負傷者の実際の合併症を評価する研究はほとんどない。本研究の目的は、ターニケットの使用と副作用・合併症を測定することだった。

方法:2006年の7ヶ月間、バグダッドの戦闘支援病院でターニケットを必要とした負傷者の追跡調査を実施した。傷病者はターニケットの使用、患肢の経過、罹患状況について評価された。文献から潜在的な合併症を特定し、それらの見通しを探った。プロトコルは組織の審査委員会によって承認された。

結果:傷病者232人の負傷した四肢309本に、ターニケット428個が適用された。最も効果的なターニケットは、Emerency Medical Tourniquet(EMT)(92%)とCombat Application Touniquet(CAT)(79%)だった。 傷病者4人(1.7%)がターニケットの位置で一過性の神経麻痺を経験したが、傷病者6人は創傷の位置で麻痺があった。ターニケットの使用時間と合併症の間に関連性は見られなかった。合計のターニケット使用時間と罹患状況(血栓、筋壊死、硬直、痛み、麻痺、腎不全、切断、および筋膜切開術)の間に明らかな関連は見られなかった。ターニケットの使用だけを原因とする切断はなかった。しかし、負傷者6人(2.6%)においては外傷性切断創傷が8箇所あり、切断完了術が施され、またターニケットを2時間以上、使用されていた。ターニケットの使用が2時間以内で筋膜切開術を受けた四肢の割合は28%(272例中75)で、2時間以上の使用では36%だった(25例中9,p=0.4)。

結論:合併症のリスクは低く、救命効果を考慮すると、リスク・ベネフィット比はプラスであった。ターニケットの使用で手足が失われたことはなかった。また、ターニケットの使用時間は合併症の増加と関連しなかった。軍用ターニケットを早い段階で使用するための教育は継続するべきである。

負傷した四肢からの出血は今も、戦場における死亡の主要な原因であり1,2、我々は最近、現代の戦争におけるターニケットの使用は、重篤な四肢の外傷を負った傷病者の生存率を向上させることを示した3。米国陸軍による戦場用ターニケットのデザイン、テスト、訓練、支給の結果4,5、戦場の軍関係者全員がターニケットを携行している。イラクとアフガニスタンの戦場では医療関係者もそれ以外の者もターニケットを携帯し、現在では一般的である。

医療関係者と非医療関係者双方によるプレホスピタル環境におけるターニケット使用に向けて、手順と装備支給を確立したのは米軍だけではないが6,7、ターニケットの使用は未だ賛否両論で全ての研究者の賛同を得るところではなく8-10、中にはプレホスピタルでのターニケット使用を全面的に禁止する意見もある11。我々はターニケットが命を救うデバイスであることを既に示したので、次の重要な論点はターニケットが四肢の組織を損傷させ切断の原因となる可能性である。ターニケットの人における使用に関する研究は限られているので、副作用に関する論争は実際のデータよりもむしろ推測に基づいている。我々は2003年以来、ターニケット使用の結果に関するデータを集めてきたが、本研究はその継続および拡大である。 我々はイラクのバグダッドにある米国の戦闘支援病院で、現場(プレホスピタル)または病院の救急部(ED)でターニケットを適用された傷病者の追跡調査を行った。目的はターニケットの使用とそれに起因する副作用を測定することだった。

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