2024/8/31 第4回日本病院救急救命士研究会(曳舟文化センター レクリエーションホール)

EMSニュース No.88

出血のコントロールのための3ステップ(必ずしもこの順番ではない)

ティム  ノワック、救急救命士・救急サービストレーニングおよびコンサルティング会社CEO 著
EMS1 2020/6/9 掲載

私たちはすべて、初歩の救急サービス教育において、教科書やインストラクターを通して、段階的な止血方法を教えられてきた。圧迫を加え、冷却パックを使用し、四肢を挙上し、圧点を圧迫し、最後にターニケットを適用させる。
ただし、必ずしもこの順序で実行する必要はない。また、救急サービスの人員の半分がトレーニングを受けた2000年代初頭にはなかった、いくつかの新しいツールが市場に出回っている。止血は過去10年間でかなり変化したが、すべての機関のプロトコルが標準化されてるわけではない。

 血液を浸み込ませたものを数種類、教室の前にセットした外傷認定コースを受けたことはあるだろうか。あなたの課題は、含まれている血液量が最も多いのはどれか、判断することだ。(これはトリックである。それらはすべて同じ量を含んでいる!)
この演習のポイントは2つある。1.以前からの出血量の推定に基づいて実施することが難しいことを示すため、2.過去に惑わされることなく、これからに焦点を当てるべきだということである。
出血時間が長くなるほど、血液が失われる。それを積極的にコントロールすることが答えであり、これを学生や救急サービス従事者に教えるべきであり、必ずしもこの順番である必要もない。

直接圧迫の機会は依然存在する
ステップ1:直接圧迫加える。出血コントロールのための以前の方法は、手で加える直接圧迫に限られていた。1つの包帯でうまくいかない場合は、別の包帯を追加し、もっと強く押す!
ここでの注意点は、これは2つの状況にのみに当てはまるということである。すなわち、1.初期に何らかの出血があった場合、2.さらに、軽微な出血、または中程度の出血であった場合。この時点から、次の段階の、決まりきった方法はない。
今では、直接圧迫を加えるという概念は、人がより強く圧迫する方法を取る必要はなく、適切な圧迫包帯を用いることによって行うことができる。従来の包帯をよりきつく包むだけでは不十分だ。

創傷に詰める
ステップ2:傷口に詰める。止血剤の使用は、従来の直接圧迫やドライ包帯を当てることは異なる。いろいろな選択肢が生まれたり消えたりしたが、残ったと思われる方法は、傷口に凝固促進剤の浸み込んだガーゼを詰める方法、同様の包帯で傷口を直接覆う方法がある。
これに、圧迫包帯と数分間の直接圧迫を組み合わせることで、傷病者の中程度から重度の出血をコントロールする効果的な手段となる。結局のところ、ターニケットは、頭部、頸部、または身体の中心部に使用できず、四肢の損傷に限られる。(それから、私たちの多くが教えられてきたことに反し、傷口に指を突っ込んでも大丈夫な場合がある)。

循環を止める
ステップ3:出血を止める。そう、循環を止めることが目標!逆効果のように思われる?重度の出血の場合には、これが唯一の選択肢(さらに最初の選択肢)かもしれない。警察官、バックパッカー、ダイバー、あらゆる市民が、重度の出血を止めるためにターニケットを携帯する。
しかしながら、これらの用具の使用は、必ずしも適切に指導されているわけではない。ある程度まで、これらの用具を単純に使用することは、実際に有益であることが証明されている。中程度の静脈出血として始まったものは、確実に大量の失血に移行する可能性がある。これらの症例では、ターニケットの早期適用が有益となりうる。
傷病者の外傷が、ターニケットの必要を示すには、必ずしも傷口からの鮮血の噴出や、脈動を確認する必要はない。これは、我々の多くが従来教えられてきたよりもはるかに早く適用することができるが、製造業者の推奨事項および現地のプロトコルに従うことは、依然として最善のやり方だと見なされる。
これらのすべての選択肢について興味深いことは、それらがすべて一般人にとっても基本であると考えられることである。現在、スポーツ用品店で止血剤を扱っており、食料品店では包帯を置いていて、インターネットでは自分のターニケットを得るために何十という情報に触れることができる。とはいえ、救急車にこうした「家庭用品」を置かないことには意味はあるだろうか。

最新の道具に関するトレーニングの提供
新製品は、中程度および重度の出血をコントロールする方法を変えるが、これらの製品の使用方法に関する教育慣習は、常に歩調が合っていない。実際に、私は、救急車へ載せるために止血剤ガーゼを1個ずつ、初めて渡されたときのことを思い出す。この製品に関する初期トレーニングはなかった。私たちは独自の調査に頼らなければならず、隊員の多くは、出血口の上にこの粘着性のあるガーゼを置き、すでに知っているドライ包帯のように処置すると勘違いした。(私たちは間違っていた!)。

教育者、管理者、医療ディレクターが、直接圧迫を超えた方法についての適切なトレーニングをしなければ、隊員の失敗に備えているだけになる。基本的な出血コントロールに関して、単純に1-2-3、1-2、または「直ちに3」のやり方は、適切な教育と道具があれば、非常に有効で扱いやすくなる。

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